某日本人チェス配信者対策戦法(ネタ) その1

まえがき

 日本のネットチェス勢で彼の事を知らない者はいないと思います。彼はよく視聴者をバカにしたり、煽ったり、“チェスはク◯ゲー”と言ったりしています。そんな彼をチェスでフルボッコにしたいと思う人もいるのではないでしょうか。

 というのは冗談で、彼の指す定跡は面白いものが多く、知っていればチェスの幅も広がるため、このコーナー(?)では彼との対局に備えるという名目で定跡を紹介し、彼の傾向とその対策について軽く書いていきます。

 いつか彼のチェスbotを作ろうと考えているのでその時はこのブログに書いてある指し回しになると思います。

(※筆者は彼の事を尊敬しています。また、傾向と対策などと書きましたが彼はとても多くの定跡を使うため、こちらが使いたい定跡を使わせてくれるか分かりません。予めご了承ください。)

 はじめに、彼が白番で、初心者に対して指すことの多い定跡を見ていきます。(今回の記事、e4 e5 を指さないという方にはあまり有益じゃないと思います。)

 

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4

 

 

 まずはこの定跡から。Italian GameのCenter Attackという定跡で、彼は白番でGiuoco Pianoになったらほぼ必ずこれに移行します。いつか改めて書くと思いますが、彼は駒交換が進まず拮抗した局面のままジワジワと攻め合うのが苦手です。そのため早い段階で局面が開き、駒交換が自然に進む定跡を比較的多く使います。

 この定跡は彼にとって好都合なもので、5.d3と指す定跡と比べて全体的に狙いが分かりやすく、中盤に向けた駒組が容易です。

 

5…exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Nc3?!

 

 

 

 この変化で7手目の白の最善手はNd2だと思いますが、彼はこの定跡に限らず、このような局面でのBb4+には多くの場合Nc3と返します。

 

7…Nxe4 8.O-O Bxc3 9.bxc3 d5

 

 

 両者が最善手を指すとこのようになります。(9.d5がメインラインですが、彼はほとんど指さないため省略します。ものぽさんという方がYoutubeに動画を上げているので気になる人は見てみてください。)ここまでの解説をしましょう。

 白番の5.d4に対し、黒番の応手はexd4のみです。これに対する6.cxd5は、中央支配という点で良い手です。しかし黒番はBb4+とする事でテンポを取る事ができます。白番でこの定跡を指したい人には、6.e5が実用的でおすすめです。

 7.Nc3は駒展開になっていますがe4のポーンが浮くため、黒番はこれをf3のナイトで取れます。これに対し白番はピン解除と後にルークを展開するため入城します。

 ここで黒番はe4のナイトが浮くためこれを取られないようにする必要があります。しかしこのナイトが戻ればRe1+などで白がテンポを取る事ができます。かといってNxc3もbxc3とされ白番がテンポを取れます。

 ここで黒番は9...Bxc3とする事ができません。そのため白がキャスリングした直後の8手目で、Bxc3としてe4のナイトを守ります。

 白番が9.bxc3としたところで黒番はd5と指し、e4のナイトに紐をつけ、c4にいる白のビショップを攻撃します。白がd5にポーンを進めるのを防ぐ意味もあります。

 この局面で白番は、e4のナイトを集中砲火するかBb5と指してクイーンサイドを戦場にするのが一般的な戦略になります。開いたbファイルを利用してクイーンサイドにある黒のポーンを攻撃する戦略も有効です。

 黒番はこうした白番の攻撃を防ぎながら戦うことになりますが、ポーンを1つ得していて駒展開もほぼ互角であるため、勝機はこちら側に多い展開です。

 ここから先の展開をガッツリ書くのは面白くないでしょうから、黒番のプランを軽く書きます。

 白番がRe8,Qc2,Bd3と指してe4のナイトやh7を攻撃する場合、キングサイドにキャスリングしてルークをe8に置き、クイーンサイドのビショップを展開しつつe4のナイトを守ります。

 白番が10.Bb5ならキャスリングしてピンを解除します。(Bd7でピンを解除すると次にBa3とされてキャスリングできなくなります)その後白番はBxc6として黒番にダブルポーンを作らせ、クイーンサイドで戦うのがメインラインです。

 彼は多くの場合ビショップを大切にしようとするため(2022年8月現在)、彼の手はBxc6ではなくQd3かQc2になると思います。その場合はBf5が強力で、黒番が少し手得する展開になりやすいと思っています。

 白番が開いたbファイルを利用してクイーンサイドを攻撃することもありますが、こちらはそこまで脅威ではないかなと思っています。

 

 対策その1はこの辺でおわりです。次はScotch GambitやDanish Gambit Acceptedについて書くと思います。